塗る vs 飲む どっちがいいの?
- Q.
- 保湿成分であるセラミドを肌に塗るのと、飲むのでは、どっちがお勧めでしょうか?
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A.
荻野先生
- 発表された文献数が多いという面では、圧倒的に塗るに軍配が上がるのですが、文献数のみをもって塗るの方がいいとは言えません。塗る場合、保湿できる箇所はもちろん塗った部分のみになりますが、飲むことによって身体中のセラミドを増やすことに繋がります。皮膚は全身を覆っているわけですから、塗り損なうこともあれば、汗で落ちてしまうこともあります。そういう利便性といった点では、飲む方に軍配が上がります。
さらに耳寄り情報!
昨今の研究でセラミドを食べることで保湿だけでなく、古い皮膚が剥がれて新しい皮膚ができる皮膚のターンオーバーを正常化させるという可能性も示唆されており、本来のツヤを取り戻すアンチエイジング機能にも期待されています。
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A.
荻野先生
- その一方で、子供に限定すると、サプリメントは適していませんので、塗るの一択になります。
特に第2章でも詳しく解説していますが、生後半年間における肌ケアはその子の一生を決めると言っても過言ではありません。毎日全身に塗って塗って、塗りたくってください。保湿剤による皮膚のバリアー機能強化が、ダニや食べかすのアレルギー物質の吸収を防ぎ、恐怖のアレルギーマーチが始まる危険性を抑えます。
結論!
目的と年齢に応じて使い分けるのがよいでしょう。
体内でセラミドを作る力が弱まってくる40歳代以上であれば、セラミド化粧品を塗り、セラミドサプリメントやドリンク剤を飲むことで、身体の内側と外側から皮膚の保湿に努めましょう。夏場汗をかき、何度も塗り直すのが面倒だという方は、飲むことで代用するのも構いません。
子供に塗るときはどういう点に気を付けるべきか?

生まれたばかりの子供は、もともと皮膚にセラミドなどの脂質が少なく、免疫機能も十分に備わってないため、アトピー性皮膚炎になりやすいです。アトピー性皮膚炎は、特定の部位に強いかゆみを感じる慢性疾患であり、お子様のQOLに大きく影響します。
起こりやすい箇所としては、乳幼児では頭や顔、幼児期では肘や膝の裏、思春期以降は顔や首の周り、上半身などと成長するにつれてかゆい場所が変わってきます。右膝の裏でできたら、左の膝にもなるというように、左右対象で現れることが多いです。

強いかゆみによって、夜眠れなくなる辛い状態が、乳幼児では2ヶ月、幼児期以降では6カ月以上も続くため、かゆみが自然に治まるまで我慢するのではなく、積極的に対処することで我慢する期間が短くなります。
セラミドを含むオイルの塗り方
入浴すると、皮膚の脂分が洗い流されますので、お風呂場から上がったあと、タオルで水分をふき取ったままにしておくと、すぐに皮膚が乾燥してしまいます。タオルで拭き終わったら、すぐにオイルを塗りましょう。オイルは、こすらず、やさしく手のひらで広げるように全身に塗ります。関節やシワがある部分は、特に注意して塗りましょう。
乳幼児では頭や顔にアトピー症状が現れやすいので、目や耳の周りも忘れずに塗りましょう。
アトピー性皮膚炎の患者さんは、アトピー症状が出ている部分だけでなく、症状が出ていない部分の肌でも水分量が減少しており、水分蒸発量が多いことがわかっています。アトピー症状がある箇所はもちろん、症状がない箇所も、日常的に保湿することが大切です。
保湿剤には、様々な種類があり、のびが良いものや、べたつかないものなどもあります。セラミドを含む保湿剤では水分の蒸散を抑えられます。好みや季節などに合わせて、ご自身の気に入った使用感のものを選びましょう。
飲んだセラミドは本当に肌まで届くの?
さて、近年増えているセラミドサプリメントなどを飲んだ場合、果たしてセラミド成分は肌まで届くのでしょうか?
セラミドに限らず、コラーゲンについても度々、この議題は持ち上がり、やれ「食べたものは腸で分解されるから肌に届くわけがない!」だとか、「効くと信じて飲むならプラセボ効果で効くんじゃないの?」だとか、しっかり調べもせず効くわけないという方達のなんと多いことか。
あなたは食べた後のセラミドの行き先をご存知ですか?
仰る通り、食べたセラミドが直接肌まで届くことはありません。しかし、小腸で吸収されたセラミドは、「スフィンゴシン」という聞きなれない成分に姿を変え、全身の皮膚に運ばれ、体内で皮膚のセラミドを産生する機能を助けます。その結果、肌の表皮のセラミドが増加することが報告されています。実際、こんにゃくセラミドを食べると、スフィンゴイド塩基により、セラミド合成遺伝子が活性化することが示されています。
さらに、セラミドを食べると、体内のセラミド産性能だけでなく、コラーゲンの産生能もパワーアップさせることが分かっています。つまり、セラミドサプリを飲めば、肌のセラミドやコラーゲンがたくさん作られるようになり、はりとなめらかさを若々しく保つことができるというわけです。
まとめ
以下の3つを心がけましょう!
子供は重症化する前に、全身にたっぷりと塗ってあげましょう。
大人は、塗る+飲むで内外から肌を守りましょう。
セラミドは歳をとるにつれ段々と減っていきます。自分でしっかりお肌をフォローしましょう。
セラミドバリアー特集のシリーズ
- 第1弾 肌バリアーでアレルギーから身を守る
- 第2弾 子供の時の肌ケアはアレルギー体質を改善する
- 第3弾 最新保湿論争 塗るvs飲む
この記事の監修者

- 大阪大学名誉教授荻野 敏先生
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- 大阪大学医学部卒業後、1995年から2013年まで同大学医学部で教授を務め、現大阪大学名誉教授。耳鼻咽喉科領域におけるアレルギー疾患の診断・治療のスペシャリストとして、アレルギー関連の臨床試験において850本以上の文献に名を連ねる。疫学的研究や医療経済学への知見も深く、消費者のライフサイクルに健康食品を組み込む術のアドバイスも行っている。
参考文献
- 斎藤 博久著, Q&Aでよくわかるアレルギーの仕組み, P.107, 2015年12月20日初版, 株式会社技術評論社発行